定期借家権Q&A 1

定期借家制度が2000年3月1より施行されました。この新しい賃貸借契約ルールの登場は、賃貸住宅市場そのものの変革を促します。
 定期借家制度は、持家と借家の大きなギャップを取り除くことにプラスに作用し、良質な住宅ストックの構築を促し、豊かな住生活を実現していく契機になると期待されています。
 「定期借家権Q&A」は実用的な立場から作成されました。このQ&Aが定期借家権理解の一助となれば幸いです。

1 定期借家とは何か
  1. 最近よく定期借家という言葉が聞かれますが、一言でいえばどういうことですか?
    ▼回答
    定期借家とは、貸し主と借り主が対等な立場で契約期間や家賃を決め、合意の上で契約が行われる自由な賃貸借契約制度のことをいいます。定期借家契約は、家賃、期間等が当事者の合意で自由に契約できますので、市場原理に則した新しいタイプの賃貸借契約です。アメリカやイギリスでは、定期借家契約が一般的です。


  2. 新しい定期借家契約の主な特徴はどういった点ですか?
    ▼回答
    定期借家契約の主な特徴は次のようです。
    1) 契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に借家契約が終了します。
    2) したがって、貸し主、借り主双方で再契約の合意がなければ、借り主の方は、引き続きその建物を賃借することはできなくなります。(従来からある借家契約では、正当事由がない限り貸し主からの更新拒絶はできず、自動的に契約が更新されます。)
    3) 居住用の建物に限らず、営業用の建物なども定期借家契約の対象になります。
    4) 2000年3月1日以後に新しく借家契約を締結する場合、貸し主と借り主との話し合いにより、「従来からある借家契約」と「定期借家契約」のいづれかを選択できます。


  3. 定期借家契約と従来からある借家契約とは、概略どのようなちがいがありますか?
    ▼回答
    定期借家契約と従来からある借家契約との大きなちがいを比較すると次のようです。

    定期借家契約 従来からある借家契約
    契約方法
    (1) 書面による契約に限る
    (2) さらに「更新がなく期間の満了により終了する」ことを契約書とは別に、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない
    書面でも口頭でも可
    更新の有無 期間満了により終了し、更新はない 正当事由がない限り更新
    建物の賃貸借期間の上限 無制限 2000年3月1日より前の契約…20年
    2000年3月1日以後の契約…無制限
    期間を1年未満とする建物の賃貸借の効力 期間を半年にするなど、1年未満の契約も有効 期間の定めのない賃貸借とみなされる
    建物の借賃の増減に関する特約の効力 借賃の増減は特約の定めに従う 特約にかかわらず、当事者は、借賃の額の増減を請求できる
    中途解約の可否
    (1) 床面積200m2未満の居住用建物で、やむを得ない事情により、生活の本拠として使用することが困難となった借家人からは、特約がなくても法律により中途解約できる
    (2) (1)以外の場合は中途解約に関する特約があればその定めに従う
    中途解約に関する特約があれば、その定めに従う

  4. 借地借家法の改正が、今回の定期借家契約の導入でおこなわれたときいていますが、その主な改正点はどういった点でしょう?
    ▼回答
    借地借家法の改正内容の主な点はつぎのとおりです。
    (1) 定期借家契約は、契約の更新がなく、期間の満了により終了する旨を明記した書面(定期建物賃貸借契約書)で締結することに加えて、貸し主は借り主に書面により、契約の更新がない旨を説明することが義務づけられています。(第38条1項、2項、3項)
    (2) 貸し主からの6ヶ月前までの通知義務については、期間が1年以上の場合、期間満了の1年前から6ヶ月前までに借り主に通知しなければならない。貸し主が通知を忘れて契約期間を過ぎた場合は、通知のあった日から6ヶ月間は、貸し主の側から定期借家契約を終了させることはできない。(第38条4項)
    (3) 借り主の中途解約については、居住用に限り、200m2未満の床面積のものについて、転勤、療養、親族の介護その他やむをえない事情がある場合のみ認める。この場合、解約の申し入れ日から1ヶ月の経過で解約となる。(第38条5項)
    (4) 定期借家契約では、借賃の改定の特約がある場合には、その定めに従う。(第38条7項)
    (5) 居住用に限っては、既存契約しているものから、貸し主・借り主がたとえ合意しても、当分の間定期借家に切り替えることはできない。(「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」付則第3条)
    (6) この法律は、借地借家法に関する事柄は2000年3月1日から施行し、定期借家の居住用の部分については、4年後に見直す。(同付則第1条、第3条)

  5. 既存法から新法の定期借家への切り替えは、居住用は不可能ということですが、貸し主が変わった時はどうですか?
    ▼回答
    平成12年3月1日前に結ばれた建物賃貸借契約においては、居住用の建物については、当分の間、貸し主と借り主が合意しても、定期賃貸住宅契約を結ぶことはできません。今回のケースも、貸し主が変わっても、借り主の権利は従来の借家権のまま継続していますので、切り替えはできません。

  6. 2000年3月1日から定期借家制度が導入されました。建物に関する賃貸借契約について、どのような種類の契約があるのでしょうか?
    ▼回答
    従来から建物賃貸借契約で使用されているものに、今回新しく定期借家契約が加わる訳ですが、類型的にパターンを整理すると次の5種類になります。
    建物賃貸借契約 内容
    普通の期間を定める契約
    (借地借家法26条)
    期間満了の1年前から6ヶ月前までに更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新しない旨の通知を貸し主はだすことができる。しかし、借り主が継続して借りる場合には、契約は自動的に更新される。
    (法定更新)

    貸し主が更新を拒絶できるが、「正当事由」が必要とされ、容易に更新の拒絶が認められない。
    (従来からある正当事由借家)
    特殊な期間を定める契約
    (借地借家法39条)
    法令又は契約により、一定の期間を経過した後に、建物を取り壊すべきことが明らかな場合には、その事由を記載した書面によって特約すれば、有効とされます。
    (取り壊し予定の建物の賃貸借)
    期間を定めない契約
    (民法617条)
    貸し主はいつでも解約できますが、「正当事由」が必要となりますので、容易に解約が認められない。
    一時的な使用目的の契約
    (借地借家法40条)
    イベント期間中の展示会場として貸すなど、一時使用のために、建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、法定更新や正当事由など借り主保護の規定はありません。
    (一時使用目的の建物の賃貸借)
    ☆定期借家契約
    (借地借家法38条)
    定期借家契約であれば、契約書で定められた期間が終了したら、正当事由がなくても賃貸借契約を終わらせることができる。
    (定期建物賃貸借契約)