定期借家権Q&A 5


4 定期借家と住宅市場・その活用法
  1. 定期借家契約のできるのは、住宅だけですか?
    ▼回答
    建物の賃貸借契約のルールですので、住宅に限らずオフィスなどの事業用などすべてが対象になります。ただし、居住用については、制限や特別の規定があります。事業用については、フリーに貸し主と借り主の合意で決められることになります。


  2. 店鋪併用住宅として使用することを了解して建物賃貸借契約をしょうと思いますが、事業用として契約することは許されますか?
    ▼回答
    住まいと店鋪が別々に区分されており、使用上も問題ない場合は、各々ふたつの契約としてもよいでしょう。住まいと店鋪が一体となっており、利用上も一体の場合は、居住用の延長とみるべきでしょう。中途解約の要件でも、「やむを得ない事情」とともに「自己の生活の本拠として使用することが困難なこと」となっています。従って、生活の本拠として使用している店鋪併用住宅は、中途解約がその要件を満たせば認められることになります。

  3. 今年から、4戸のアパートを新築し経営することにしています。そのうち2戸を定期借家契約で、残りの2戸を従来からある借家契約で賃貸契約を結ぼうと思っています。
    そういうことは、可能なのでしょうか?

    ▼回答
    賃貸借契約は各戸で行いますので、同一のアパート内で、戸別に契約形態が違ったとしても、問題はありません。質問のような場合でも可能です。ただし、定期借家契約の場合は、事前の説明、期間終了の通知などの取り決めがありますので、気をつけておくのが必要です。

  4. 賃貸住宅10戸を経営していますが、入居者募集の際、全部の住戸について定期借家契約と従来型の建物賃貸借契約のどちらかを選択できる方法を検討しています。これを広告に表示してもよいでしょうか。また、定期借家契約の期間を、例えば2年契約か4年契約のどちらかを選択してもらうことはできるでしょうか?
    ▼回答
    どちらの場合も問題ありません。表示規約10条で禁止している不当な二重価格表示にも該当しません。ただし、定期借家契約と従来型の契約とで、賃料や敷金、礼金等の取引条件が異なると考えられますが、この場合は、両方の条件を明示する必要があります。
    また、2年契約と4年契約等、契約期間の長短により取引条件を異ならせる場合も同様に、両方の条件を明示する必要があります。


  5. 定期借地権のほうも使いやすくなるといわれていますが、それはどういう意味ですか?
    ▼回答
    定期借地権には、契約期間が50年以上の一般定期借地権と30年以上の建物譲渡特約付き定期借地権と10年から20年の業務用定期借地権の3種類があります。定期借家で特に活用がしやすくなるのは、2番目の建物譲渡特約付の定期借地権です。従来からある借家契約ですと、定期借地の期限が終了し、建物が貸し主の方に移ったとしても、借り主がその建物にずーと居住し続ける場合には、貸し主の都合で自由に使用できないからです。法23条3項が新設され、建物譲渡特約付借地権を用いた土地の上の建物賃貸借契約につき、定期借家契約を結ぶことができるようになりました。定期借地の終了後は、定期借家である旨定めておけば、確定的に貸し主が使用できるようになります。(始期つきの定期借家契約)。法23条は最短30年で借地契約を終了できますので、50年以上は長すぎるという地主にとっては、30年以上の建物譲渡特約付きの定期借地権が利用され、普及されてくるでしょう。
    一般定期借地権(法22条)との関係においては、期間満了時に借家人がいる場合について、従来も定期借地権終了により建物賃貸借契約も終了することになっていますが、定期借家により、定期借地権設定時の現状回復としての建物賃借人の立退きに関して、今までほど神経を使わなくて済むことになります。


  6. 定期借家契約をした場合の相続税における貸家建て付け地の評価減は、どのような扱いになるのでしょうか?
    ▼回答
    現在のところ、従来と変わるところはありません。定期借家の賃貸借契約でも貸家建付け地の評価減はうけられます。また、自己の居住用の住宅を貸家にしていた時に相続が発生しますと、相続税の評価は、相続発生時の現況で判断されます。
    土地の相続税評価額=更地の相続税評価額×(1-(借地権割合×借家権割合))
    建物の相続税評価額=固定資産税評価額-借家権価額
     借家権価額=固定資産税評価額×借家権割合
     借家権割合は、おおむね全国的に30%です。ただし、大阪国税局管内の特定の地域(市制地及び路線価設定地域)は40%です。
     借地権割合は、30%〜90%までの範囲により定められています。地域により異なりますので、税務署に備え付けられている財産評価基準書により確認してください。なお、借地権の取引慣行のない地域にある貸家建付地については、借地権割合を20%として評価します。
    (小規模宅地の特例)200m2までの小規模宅地は、通常の評価額の一定割合が減額されます。その減額割合は、事業用も居住用も80%です。但し、「一定の場合」には事業用も居住用も50%になります。
     ・ 居住用宅地で80%減額(20%評価)となる場合
      (1) 配偶者が取得した場合
      (2) 被相続人と同居していた親族が申告期限まで引き続き居住している場合
      (3) (1)及び(2)の者がいない場合において、一定の場合
      (4) 被相続人と生計を一にしていた親族が相続開始前から申告期限まで自己の居住の用に供している場合  従って、以上の場合以外は、50%減額(50%評価)となります。
     ・ 不動産貸付宅地の場合は、50%減額(50%評価)となります。駐車場や自転車置き場を含めます。

  7. 定期借家により不動産市場は大きく変わるといわれていますが、それは、どういった点でしょうか?
    ▼回答
    まずは賃貸住宅市場が活性化し、広い良質な賃貸住宅が供給されてくることが十分予測されます。おおきくは、つぎの5つのポイントでしょうか。
    (貸し主メリット)
     (1) 将来の収益が確定し、予測できる。
    賃料も市場原理できまることになります。なるべく安定的に居住してもらうこといいかえれば良質な賃貸住宅にメリットがでてくるでしよう。
     (2) 貸家の供給者が多様になる
    現在の空家の何割かが市場にでてきます。また高齢者が広い家を貸し自分は借家に住まうというかたちもでてくるでしょう。
    (借り主メリット)
    借り主は選択肢がふえ、自らのライフステージ、ライフスタイルに合った住まい方ができるようになるでしょう。持家は借家の潜在的供給者となります。
    (その他)
     (1) 持家市場が変わる
    持家も貸せるという選択肢ができ、持家需要を増すとともに、持家・借家にこだわらず、住宅は利用するという視点が重視されてきます。
     (2) 紛争処理コストが低減する
     (3) 土地の評価が変わる
    将来の収益がどのくらいかで評価され、土地は利用するものという意識がつよくなるでしょう。


  8. ファミリー向けの賃貸住宅を計画していますが、定期借家ではどういったメリットがありますか?
    ▼回答
    定期借家では、従来からある借家契約に比して次のようなメリットが考えられます。
     イ) 貸し主にとっては、期限の到来とともに入居者を選べることになりますので、悪い借り主を排除できるのが大きなメリットです。
     ロ) 万が一、その賃貸住宅を売却しなければならない場合でも、スムーズに売却ができることです。何故なら、よい入居者に恵まれた賃貸住宅の価値は、不確かな入居者の賃貸住宅に比較して十分投資価値が高いからです。
     ハ) 長期の賃貸住宅経営が十分計画でき、その後の有効利用も視野にいれることができます。

  9. これから、賃貸住宅を計画する場合、どういうものがよいですか?
    ▼回答
    当然、立地や市場に適した賃貸住宅を計画することになります。その中で、将来的にも安心して経営ができるよう、良質な賃貸住宅を建築しておくことが重要です。また、建物の維持管理はしっかりとすることが大切です。長期に安定的な経営を目指す方がメリットがおおきくなります。

  10. 今回賃貸住宅経営をするに当たって、定期借家契約でと思っています。従来の賃料に対し、どの程度の賃料設定にしたら良いでしょうか?期間限定、法定更新なし、退去費用も無しとなると、貸し主にとっては、不利ともいえます。その分は賃料は下がるのではないでしょうか?
    ▼回答
    一概には、単純に賃料は下がるとはいえないでしょう。何分にも、貸し主にとっては、定期借家はメリットのあることですから、多少、従来からある借家で形成された家賃よりは、少し低い賃料設定をするのもよいと思われます。ただ、契約期間を借り主希望にフイットさせ、固定賃料にするとか、礼金無し、更新料無し等の借り主へのメリット表示をしたりで、賃料以外にカバーできるケースも多いと思います。借り主も従来の2年毎更新での煩わしさと不安から開放されるというメリットが享受できます。
     長期に賃貸経営の全期間を比較するならば、従来からある借家契約では、賃貸住宅終了時での立退き料にからむ膨大な費用と時間、建替え時期が確定しないというリスクを負っているのに比較して、定期借家ではそうした心配・リスクのない分、有利な経営ができる訳です。
     今後は、新しく供給される賃貸住宅の多くが、定期借家契約となると推測されますので、あまり、従来からある正当事由契約に基づく賃料にとらわれる必要はないと思います。それだけの魅力ある賃貸住宅ならばそれに相応しい賃料がとれることになります。市場の判断ということです。
     そうした意味で、これからの賃貸経営では、トータルな経営の視点が大切でしょう。
     (A) 従来からある借家契約
     賃貸期間(一部分カットされる)   ? 
    終期:不確定 立退き料、
    バラバラな空室
     
     (B) 定期借家契約
      賃貸期間(まるまる貸せる)  
    終期:確定

  11. アパートの計画をしておりますが、定期借家権の導入で賃貸市場はどのようになるのでしょうか?
    ▼回答
    確実に供給は増えると思います。その分貸し主側も競争がはげしくなります。従って、その市場にマッチしていない賃貸住宅や質のよくない賃貸住宅は競争にまけることになるでしょう。賃料は貸し主と借り主との合意によって決まりますので、市場原理が貫かれることになります。

  12. 定期借家といっても多様な契約パターンが存在するとお思いますが、どのように考えられますか?
    ▼回答
    大きくは、3つに類型化されるでしょう。(1)期間限定型のもの、(2)従来の借家契約の代替え、(3)新しくうまれるものです。
     (1) 期間限定型のもの:建替えや取り壊しが予定されている賃貸住宅では、当然その時期をターゲットにした定期借家が活用されることになります。
     (2) 従来からある借家契約にかわるもの:当然再契約を念頭において対応することになりますが、定期借家を活用するメリットは、悪い入居者が排除できるという点にあります。入居者について安心であることは、貸し主にとっては、大きいメリットです。もちろん、立退きトラブルがないことも安心です。
     (3) 新しくうまれるもの:新しい住い方の提案をともなうものです。
    イ) かなり長期の賃貸契約のもの
    ロ) 戸建住宅の賃貸化
    ハ) 分譲マンションの賃貸化


  13. 事務所で貸すことも考えていますが、定期借家ではどのような点に注意すべきでしょうか?
    ▼回答
    その立地や市場に大きく係ることですが、契約期間としては、5年から10年程度が多くなるものと思われます。長期に設定する場合は、転貸しを認める等も必要です。
    貸し主として重要なことは、運営・管理です。維持管理を良くし、よいテナントに恵まれることは、その物件の価値を高め、市場賃料に反映されることになります。プラスの循環をうむことになります。また、一般的なパターンの契約ではなく、オーダーメイドの契約となることが十分予測されます。それに対応できるよう、契約上の法的知識や交渉能力が必要となってくるでしょう。


  14. 賃貸住宅の場所と遠隔地に住んでいるため、サブリースを頼もうと思っています。
    一括借上げなどのサブリースと定期借家との関係はどうなるのでしょうか?

    ▼回答
    貸し主とサブリースの契約関係とサブリース会社が借り主に貸す契約関係は、次のような類型に区分されます。
    パターン 貸し主とサブリース会社の契約 サブリース会社と
    借り主の契約
    コメント
    A 定期借家 定期借家 終期の時期の整合性だけで全く問題がない
    B 定期借家 普通借家 サブリース終了後、借り主との契約が続き問題があるため、選択しない方がいいでしょう
    C 普通借家 定期借家 まだ問題は少ないと思われます
    D 普通借家 普通借家 終期が確定できず問題がある

    ここでは、便宜上、従来からある借家契約を普通借家と表現しています。正当事由がないと、貸し主から解約ができない賃貸借契約のことです。
     定期借家の導入により、一括借上げなどのサブリースは多いに活用されてくると予想されています。サブリース会社の選択にあたっては、借り主との契約はどうするのか、定期借家であれば安心です。もし、普通借家で借り主と契約を結ぶという場合、借り主の内容を把握しておく措置が必要といえましょう。何故なら、サブリースの期間終了後は、貸し主と借り主との直接契約となるからです。

  15. 従来からある借家契約での問題は、正当事由がない限り貸し主は解約できず、法外な立退き料が必要とお聞きしましたが、裁判ではどういった点が斟酌されるのですか?
    ▼回答
    貸し主の事情と借り主の状況をもって、判断されます。次のような点が比較検討されます。そのひとつに立退き料があります。ヨーロッパなどでは、立退き料という概念はなく日本固有の考え方といえます。それでは、その判断基準を示します。
    ◎ 正当事由の判断基準(事情比較の原則)
    貸し主側の事情 借り主側の事情 その他の事情
    (1) 貸し主の自己使用の必要性
    (居住用、営業用、その他)
    (2) 第三者の使用の必要性
    (親族、従業員など)
    (3) 建物売却の必要性
    (4) 建物修繕、新築、取り壊しの必要性
    (5) 新しい貸し主の事情
    (6) 貸し主の破産など
    (1) 借り主の自己使用の必要性
    (居住用、営業用)
    (2) 転借人・同居人の使用の必要性
    (3) 借り主の破産など
    (1) 契約成立時の事情
    (2) 契約後の貸し主と借り主の不信行為
    (3) 建物の存する地域の状況
    (4) 立退き料や代替え家屋の提供
    (5) 住宅事情の変化や裁判官の社会観

    具体的には、それぞれの事情について、4段階にランク分けし、貸し主・借り主の双方の事情を比較検討し、正当事由の判断がなされます。
    例えば、貸し主側の事情の居住の必要性では、つぎのようになります。
    (A段階) その建物がなければ死活にかかわる場合
    (例えば、貸し主の住いが火災で焼失した場合、古くなってとても住めない状態になった場合、単身で狭い建物に住む老齢の貸し主が家族と同居する場合。)
    (B段階) その建物がなければきわめて困窮するほど、切実な場合
    (例えば、貸し主の住む建物が手狭になった場合、貸し主も借家住いで明渡しを迫られている場合)
    (C段階) その建物があれば生活の便宜上のぞましいという場合
    (D段階) その建物を使用する必要性がほとんどない場合

    従って、A、B段階の貸し主は認められやすいといえます。その場合でも借り主の必要性が、貸し主の必要性を上回る場合は、「正当事由」は否定されます。借り主が死活問題(A段階)のレベルの場合には、貸し主の正当事由はほとんど認められないということになります。

  16. 今まで、従来からある借家契約では、高齢者等には貸し主としては貸しづらい点があったとお聞きしています。定期借家では、貸しやすくなるのでしょうか?
    ▼回答
    従来からある借家契約では、高齢者世帯、身体障害者世帯、母子世帯、多子世帯等は、貸し主としては貸しづらい入居者ということになります。それは、所得上昇期待が小さく、居住期間が長くなる傾向があり、そうしますと、前述のように立退き料の問題など、貸し主にとっては、よりリスクが大きいからです。
     しかし、定期借家では、そうした心配がなくなりますので、きちんと契約を守る以上、あらゆる借り主に門戸が開かれることになります。高齢者だからといって入居制限をする必要は全くありません。むしろ転勤等がないということで、安定収入をのぞまれる貸し主にとっては、良い借り主といえるのではないでしょうか。
     また、賃貸住宅経営者の約6割が「高齢者にも貸しやすくなる」と答えています。((社)住宅生産団体連合会「定期借家権の導入に関するアンケート調査報告」1998年)


  17. 定年退職後、南ヨーロッパのリゾート生活を楽しむため、自宅を定期借家で賃貸にだすことを考えています。その場合の留意点はどういった点でしょうか?
    ▼回答
    自宅を定期借家で賃貸にだし、その賃料で南ヨーロッパのプール付戸建住宅を借りて、3〜4年居住し、バカンスを楽しむことを計画されているご夫婦がいます。こちらの自宅を貸す賃料で向こうの借り賃と大体同等でいけるとの由、生活費は年金を充当するとの話です。
    そういった場合の注意点はつぎのようです。
     イ) あまり長い期間を最初から設定しないで、無理のない期間とする。
     ロ) あらかじめ、何回かツアーで行き、その地域になじみの知人をつくっておく。
     ハ) 日本の自宅の方は、サブリースを活用し、必ず定額の賃料が確保されるようにする。
    (個人対個人だと中途解約条項で不安定という点、管理が充分まかせられる業者に依頼すること)
    こうしたことが、日本国内でも自分の住んでみたかったところに、自由に住めるようになる日も近い。その地域のまちなみ・まちづくりの真価が問われるということでしょう。
    このケースは、老後の生活に持家を定期借家で活用するひとつのパターンです。その他に、次のような多くの定期借家で持家という資産を活用する活用法があります。
     ・ 「庭付きの広い戸建住宅を貸し、便利な管理のしやすい都心のマンションライフを楽しむ場合」
     ・ 「持家を貸した賃料で、ケア付住宅に入居する場合」etc