売買契約書


STEP7:不動産契約書のチェックポイント
契約をするときの心がまえ
 
 重要事項説明を受けて納得がいくと、いよいよ売買契約です。購入物件の詳細については重要事項説明の時点ですでに詰めてあるので、売買契約はともすれば形式的になりがちですが、不動産購入の過程の大きな山場です。不動産の売買では売主と買主が対等の立場で契約を締結します。したがって、いったん契約書を作成すると、それ以降その取引は契約書の記載内容に従って進められ、将来、紛争が生じたときも原則として契約書に基づいて解決されることになりますので、契約日に先立ち、事前に実際につかう契約書用紙をもらい、よく中身を確認することが大切です。(実際の契約では、契約日として約束した日時に、契約条項の全てに目を通す時間的な余裕が与えられない場合が多いと思われますが、一旦、売買契約書に記名押印してしまうと、後になって契約の内容にクレ−ムをつけても手遅れです。また、契約書の中身を確認する時は、重要事項説明書と同様の項目があるので、照合しながら読むことが大切です。)

契約書は非常に大切なものです
 
不動産を売買するときは、契約書の内容を十分確認しておかなければなりません。契約書をよく読んで意味の分からないこと、納得のいかないことが書いてあったら、納得できるまで、聞いたり調べたりしてから契約しましょう。

チェックポイント
  1. 当事者の指名および住所
  2. 売買の目的物の表示
  3. 売買価格
  4. 代金の支払い時期とその方法の取り決め
  5. 手付金の額と性格の取り決め
  6. 売買対象面積の取り決め
  7. 所有権の移転・引渡・登記の取り決め
  8. 抵当権などの登記抹消の取り決め
  9. 公租公課の取り決め
  10. 設備・備品などの取り決め
  11. 危険負担の取り決め
  12. 契約違反による解除の取り決め
  13. 瑕疵担保責任の取り決め
  14. 宅地建物取引主任者の記名・押印
疑問点を残したまま契約書に印鑑を押してはいけない
手付金や内金の意味ははっきりさせておく
契約をすませたらすぐに登記を行う
印鑑は必ず自分で押す
拇印や署名だけでも契約は有効
ペナルティのある契約解除に注意する
主な契約解除の注意
1.ローン特約による解除
2.手付解除
3.契約違反による解除
4.担保責任による解除
5.クーリング・オフによる解除
当事者とは売り主および買い主のことです。その氏名、住所は住民票や印鑑証明書で、また法人の場合は会社の登記簿で確認することができます。これらの確認は、物件の真の権利者を知るうえで大切なことです。

2.売買の目的物の表示

契約書の最初に表示されます。所在地、地番、地積などを記載し、対象物件を特定します。一筆(一区画)の土地の一部分譲や、マンションの一室の売買などでは分譲地の区画番号やマンションの部屋番号などが表示されます。登記簿の「表題部」、重要事項説明書の「物件の表示」の欄に書かれている事項と照合して、間違いがないか確かめましょう。

3.売買価格

消費税がかかる場合は、消費税を含めた購入価格が記載され、その旨が明記されます。尚、土地には消費税はかかりません。

4.代金の支払い時期とその方法の取り決め

購入代金の支払い方法は、契約締結時に手付金を払い、それから中間金、残金と何回かに分割することが多いのですが、一括払いもあります。残金の支払いは、移転登記手続申請時に行うのが安全です。中間金の支払いと引き替えに物件の「仮登記」を請求します。その旨を契約書に記載します。

5.手付金の額と性格の取り決め

手付金の額は、売主が個人の場合は制限はありませんが、不動産会社が売主の場合は売買代金の20%以内と決まっています。手付金は契約成立の証拠となり、とくに取り決めがなければ、手付金を放棄すれば契約を解除することができる「解除手付」の性格を持ちます。

6.売買対象面積の取り決め

実測面積による実測売買にするのか、公募面積による公募売買にするのか決めます。一般的には公募面積での契約が多いのですが、実測面積での取引もあり、このような場合は、とりあえず登記簿面積で売買代金を決めておき、残金の決済までに実際に測量を行い、その後実測面積をもとに改めて売買代金を精算します。その場合、測量会社への支払いは売り主、買い主どちらが負担するか契約書にその旨、明記されていることが大切です。

7.所有権の移転・引渡・登記の取り決め

契約が締結されると、買主は売買代金の支払い義務を負い、売主は所有権移転、物件の引渡義務を負います。一般的に、売主の所有権移転登記は、買主が売買代金を支払い終わった時点で行います。引渡日は当事者の合意の上で決めます。売主は引渡までに電気・ガス・水道などの料金を清算しておきます。

8.抵当権などの登記抹消の取り決め

 対象物件に抵当権、地役権、地上権などの第三者の権利が存在するときは、売主は契約内容に従って所有権移転までに、それらの権利を除去・抹消し、買主が契約どおりに所有できる状態にしておく義務があります。

9.公租公課の取り決め

公租公課とは、土地や建物に課せられる固定資産税や都市計画税などの税金のことをいいます。これらの税金は毎年1月1日時点の登記簿上の所有名義人に対して課税されます。年の中途で所有権が移った場合、税金の分担方法については、当事者間で取り決めを行います。決まった内容は契約書に明記しておきましょう。

10.設備・備品などの取り決め

中古住宅の場合は、門、塀、庭木、照明器具、エアコンなど、いろいろな設備や機器を売主が残していくケースがほとんどですが、何を置いていくのかを取り決め、契約締結時に一覧表にしておきます。

11.危険負担の取り決め

契約から引渡までの間に、物件が火災、地震、台風などにより損害を受け、しかも売主、買主のいずれにも責任がない場合、損害に対しどちらが責任を負うのかを決めておきます。民法では買主が原則とされますが、不動産売買契約では、特約によって売主が負担するのが一般的です。損害が軽い場合は、売主が損害を修復するかもしくは売買代金を減額する、契約の続行が不可能なほどの損害であれば、買主は契約解除ができ、支払った代金は全額返還される、などの規定を設けておく必要があります。

12.契約違反による解除の取り決め

売主、買主のどちらかが契約の義務を果たさないときは、その相手側が契約の解除ができるという取り決めです。通常は8日間程度の期間を設け、相手側の契約義務の履行を催促し、それでも履行されない場合に契約を解除できるとされています。

13.瑕疵担保責任の取り決め

契約時に買主が注意を払ったにもかかわらず発見できなかった欠陥を「隠れた瑕疵」といいます。民法では買主が瑕疵を発見してから1年間は売主に対し、損害賠償又は契約の解除の請求ができると定めています。売主が個人の場合は、買主、売主双方の話し合いで得た合意をもとにして、瑕疵担保責任の期間や条件を決め、契約書に明記しているケースがあります。売主が不動産会社の場合は、瑕疵担保責任の期間について、引渡日から最低2年以上とするのが普通です。民法の原則よりも消費者が不利になるような取り決めは、宅地建物取引業法で禁じられています。

14.宅地建物取引主任者の記名・押印

契約書には宅地建物取引主任者が記名・押印することになっています。この記名・押印は必ず確認しましょう。
疑問点を残したまま契約書に印鑑を押してはいけない
 重要事項の説明を受け、納得したら契約の段階に進みます。このとき注意したいのは、疑問点を残したままで契約書に押印やサインをしてはならないということです。
 契約後に起こるトラブルは解決が難しく、あとで交渉しても、よい結果が得られるとは限らず、解決までに時間もかかります。契約前には、契約書を1部もらってよく読んでおくのもひとつの手段です。
 尚、造成工事や建築工事が未完成の物件の場合は、宅地造成の許可や建築確認が下りた後でないと契約できません。
手付金や内金の意味ははっきりさせておく
 不動産の売買契約を結ぶ際には、必ず「手付金」や「内金」の支払いがあります。金額は物件の2割程度となっています。
 「手付金」は契約が成立した証拠となるもので、売買代金の一部とみなされます。もし買主が一方的に契約を解除する場合は、支払った金額は放棄しなければなりません。ただし、解約ができるのは相手が契約の履行に着手するまでの期間です。
 「内金」は売買代金の一部を前払いするという性格を持つもので、売主側の契約の履行を容易にするために、買主が協力するという意味があります。内金の支払いは履行の着手とみなされ、その後契約の解除はできません。内金が手付金と同様に扱われる場合がありますので、内金を支払うときは手付金と誤解されないように契約書に明記しておくことが大事です。
契約をすませたらすぐに登記を行う
 日本の法律では、不動産を二重三重に売買することを禁じていません。そこで権利者を確定する必要から、不動産の登記制度があります。所有権は、登記によって初めて保証されます。
 売主が第三者に無断で売却し、この第三者が先に移転登記をしてしまうと、たとえ買主が代金を支払っていても所有権は先に登記した人にいってしまいます。したがって、登記に必要な書類を売主から受け取ったら、すぐに登記を済ませておきます。
印鑑は必ず自分で押す
 印鑑を押す書類の内容・種類をよく理解した後、自分で印鑑を押します。業者に任せたままにしていると、自分の知らない書類にまで印鑑を押されてしまったなどということになりかねません。ひとつひとつが大事な書類なので、他人任せにしないで、慎重に取り組みましょう。
拇印や署名だけでも契約は有効
 契約は拇印や署名でも有効です。「拇印だから大丈夫」といわれ、気軽に押してしまうと、後で後悔することになります。
ペナルティのある契約解除に注意する
 契約の解除とその規定にはいくつかの種類があります。ローン特約による解除、手付解除、契約違反による解除のほか、担保責任に基づく解除、クーリング・オフによる解除などがあります。
 契約解除の多くは、ペナルティを伴います。トラブルを最小限にとどめるために契約時の確認と、合意に基づいた明文化が必要です。

主な契約解除の注意

1.ローン特約による解除

 借りられるはずになっていた住宅ローンが借りられなくなり、新居の購入ができなくなった場合、契約時に決めておいた融資利用の特約(ローン特約)の期限内であれば、手付金の放棄や違約金の支払などの義務を負うことなく、契約を解除できます。特約を締結していなければ適用されませんので、重要事項説明書や売買契約書の書面上でよく確認しておきましょう。

2.手付解除

 売買契約の締結時に、買主は手付金を売主に支払います。金額は売買代金の1〜2割程度。後日買主の都合で契約を解除する場合は、支払った手付金は全額放棄しなければなりません。手付解除は契約自体に解除する原因がなくても可能です。売主側からの解除は、受け取った手付金の倍額を買主に返還します(「手付金の倍返し」)。
 手付解除が可能な期間は、通常「契約義務を履行する前であること」という制限があります。この時期を過ぎると手付解除はできません。尚、手付解除できる期間を売主と買主との話し合いで決める場合、売買契約後1ヶ月程度が標準です。

3.契約違反による解除

 売主または買主のいずれかが、売買契約によって生じた義務を履行しないときに、契約違反による契約の解除を行います。例えば、約束の時期が過ぎても売主が物件の引渡を行わないとか、買主が売買代金を支払わないといったような場合の解除をいいます。方法は履行しない相手に対し、一定期間を設けて義務の履行を催告し、それでも履行しないときに契約を解除し、違約金を請求できるとされています。
 契約違反によって契約が解除されれば、買主はそれまでに支払った手付金や中間金などは無条件で返還されると同じに、違反した相手に対し、その解除によって生じた損害の賠償を求めることができます。
 損害賠償額や違約金は、事前に決めることがあります。売主が不動産会社の場合は、この合計額は売買代金の2割以内と決められています。

4.担保責任による解除

 担保責任とは、売買の目的物件に何らかの問題(他人所有の不動産の売買、抵当権のついた不動産の売買、数量の不足、隠れた瑕疵があるなど)があった場合に売主が負う義務です。

5.クーリング・オフによる解除

 クーリング・オフとは、特別な状況のもと、冷静な判断ができないうちに購入申込や契約をしてしまった場合に8日以内なら白紙に戻せるという制度です。しかし、売主が業者であること、契約場所が仮設テントや本文販売などの特別な状況下であること、物件の引き渡しを受けておらず完売代金の支払いも完了していないことなどの条件を満たす必要があります。